反撃 - the hope -




「……そうか。状況は芳しくはない、か」


 報告を聞き、ゲアハルトは眉を寄せながら息を吐く。口々に寄せられる報告は決して良い内容ではなく、どれだけ攻め込まれているのか、窮地に追いやられているのかということをまざまざと突き付けられるようだった。だが、もう無理だと投げ出すわけにはいかない。何より、状況は芳しくはないと口にしても打つ手がないと彼が口にしたわけではないのだ。


「火災が発生してる東の塔は置いてきたエルンストさんのところの私兵の方たちと第二の小隊で消火に当たってます」
「なら、東の塔付近は彼らに任せよう。もう一か所、キルスティ様の居室付近も火災が発生していたな。消火には近衛兵を全員回せ。それぐらいなら出来るはずだ」


 元より近衛兵を戦力として数える気がないらしいゲアハルトは数名の兵士を混戦状況の城内のあちらこちらで右往左往しているであろう近衛兵に指示を出すよう命じると、彼らは敬礼の後に踵を返して広間を飛び出して行った。それを見送ることもなく、ゲアハルトは市街地の様子を問うた。
 王都ブリューゲルの中でも王城は中央よりも北に位置している。一番離れた南区にまで騒ぎが届いているかどうかは知れないものの、爆発音が轟いたことで少なくとも北区や周辺の城下町には騒ぎが伝わっているはずだ。彼らが家の外に出ていたとなれば、それこそ市街戦になったときに被害が甚大なものになりかねない。


「北区や城下町では既に住民が騒ぎ始めているとのこと。まだ大きな騒ぎにはなってはいませんが、それも時間の問題かと……如何しますか」
「……門を下ろせ」
「え、しかしそれでは、」
「構わない。今最優先すべきことは帝国兵を一人として王都より外に出さないことだ。外に出られれば、それこそ見つけ出すのに厄介だ」


 王都ブリューゲルには四方に四つの門がある。それら全ての門を下ろすということは王都に住まう民も逃げ出すことが出来ないということだ。本当にいいのだろうかと不安げな顔をする兵士らを前に、門を下ろすようにと命じたゲアハルトの表情は変わらない。だが、彼が言うことも決して間違ってはいないのだ。
 帝国兵に逃げられ、それを再び捕えるということは決して容易なことではない。ならば、最初から退路を断ってしまった方がいいのだ。今から住民を避難させることは難しく、余計な騒ぎになりかねない。しかし、理解は出来てもそれでいいのだろうかという不安はアイリスも感じずにはいられない。ちらりと視線を上げてゲアハルトを盗み見ると、彼はやけに厳しい表情を浮かべていた。現状が芳しくないということ以上に、何か他の思惑があるのではないかとさえ思える表情に僅かに目を見開く。しかし、結局はそれを問うことは出来ず、「現在王都に詰めている騎士団は?」とゲアハルトもアイリスの視線に気付くことなく口を開く。


「第一から第七、それから第十、第十一です。国境や収容施設の騎士団も呼び戻しますか?」
「いや、必要ない。それでは帝国の思う壺だ。国境警備は続行、国境連隊も下げる必要はない」
「しかし……」
「下げれば一気に国境からも攻め込まれて挟撃される」
「……」
「今現在攻め込んで来ている帝国軍は王都内部で殲滅する。生きて帰すな」


 その声音は冷たく、アイリスは戸惑いの表情を浮かべた。ゲアハルトにしてみれば、帝国兵は本来ならば彼の国の人間であり、守らなければならない存在のはずだ。だからこそ、今まで捕虜として来た帝国兵は全て法律に則った扱いをしてきたのではないのかと思っていた。だが、今のゲアハルトは躊躇うことなく見つけ次第、殺せとそれと同義の言葉を発した。
 捕虜する余裕がないということも分かる。相手の命を慮って戦っていられるほどの余力はベルンシュタインにはない。しかし、此処まで徹底して殲滅を命じた彼を見たことのなかったアイリスは戸惑いを隠せなかった。それはレックスやレオも同じらしく、それぞれ僅かに苦い表情を浮かべていた。
 もしや、その命令の真意が自身の口から帝国兵を殲滅することを命じることでベルンシュタインの兵士の信頼を得ようというところにあるのなら――そこまで考えたアイリスは咄嗟に口を挟もうとする。何もそのような、自分で自分自身を傷つけるような真似までする必要はないのだと言おうとした矢先、広間に「で、伝令ですっ!」と息を弾ませながら兵士が飛び込んで来た。


「迎撃に、出ていた……第四、第六騎士団が……かっ、壊滅とのことです!」


 顔を青くしながら必死の形相で告げる兵士にゲアハルトは目を見開き、周囲の兵士らの間にはどよめきが走った。アイリスがそんな、と口元を手で覆っていると「場所は何処だ」と城内の地図を持って来させたゲアハルトは第四、第六騎士団が壊滅したという場所を伝令の兵士に答えさせる。
 その位置はどちらも西の中庭付近であり、そこで何者か――恐らくは鴉の人間と鉢合わせたのだろう。彼らの力量を目の当たりにしたアイリスには、歴戦を掻い潜っている相手であろうと退けることは難しくないことがすぐに分かった。しかし、鴉の中でも誰がそのようなことをしたのだろうかと考えていた彼女はふとあることに気付き、慌ててゲアハルトが広げている地図へと駆け寄った。


「どうした?」
「あの、わたしとエルンストさんがカサンドラという女性ともう一人、男性と交戦したのはこの辺りでした」
「なるほど……窓から西の中庭に逃げた可能性が高いか……」


 アイリスとエルンストがカサンドラとアウレールと交戦した場所を指差すと、そこは西の中庭付近だった。すぐに移動できる距離というわけではないものの、窓から逃げ出せば決して辿り着けない場所ではない。その付近で帝国兵らと交戦していた第四、第六騎士団が運悪くも彼女たちに遭遇してしまったのかもしれない――ならば、カサンドラと交戦していたエルンストは一体どうしたのだろうかという不安が脳裏を過る。
 彼を倒したからこそカサンドラらはその場を脱出したのか、それともエルンストから逃れる為に撤退したのか。どちらかは知れないものの、アイリスは不安に顔を歪めた。平気だと彼は言っていた。けれど、だからと言って彼は無傷で無事であると思えるほど、カサンドラらが甘くもなければ、弱くもないということをアイリスはよくよく知っていた。
 アイリスはアウレールを退けることが出来た。だが、それは彼女を殺してはならないという命令があり、彼に油断があったからこそだ。そうでなければ、退けることなど不可能だった。要は手加減されていただけに過ぎないのだ。そのことを悔しく思っているとふと耳に周囲のざわめきが聞こえて来た。カサンドラの名が飛び交うその様子に顔を上げると、「カサンドラは、」とゲアハルトが口を開く。


「噂か何かで聞いたことがあるかもしれないが、……ベルンシュタインを裏切り、帝国に寝返った人間だ。特徴は赤紫の髪に赤い目、見た目は俺やエルンストと変わらないはずだ。アイリス、どうだ」
「は、はい。外見年齢は司令官やエルンストさん程かと思います」
「あいつは元第一所属の人間だ。恐らく、今回の侵攻の指揮を執っているはずだ。言いたいことは分かるな、元第一所属ということは城内のことはもちろん、城下のことも精通している。こちらの指揮もある程度は読んで来るだろう」


 ゲアハルトの言葉に兵士らは口を噤んだ。裏切り者がいるということはそういうことだ。ただでさえ、ルヴェルチが彼らの手引きをしていたのだ。予想しているよりも多くのことをカサンドラらが知り得ていることも考慮した上で動かなければ、やられるのは此方の方だ。


「手心を加えれば足元をすくわれるのは此方だ。一切の手加減は不要、帝国兵は全て殲滅しろ」


 改めて発せられた命令に今度は揺るぎない返事が返される。捕えようなどと思えば、それこそ彼らに付け入られる隙になってしまう。ならば、最初から殺すつもりで掛かっていく方が余程勝算はあるというものだ。そうでなくとも、今回の侵攻には幾人かの鴉が紛れ込んでいるのだ。油断は出来ない。
 ゲアハルトは先ほど以上に引き締まった表情の彼らを見渡すと、視線をレオに向けた。どきり、と肩をびくつかせた彼にゲアハルトは微苦笑を浮かべると「先ほどまでの威勢はどうした」とからかうように言う。


「え、あ……あれは無我夢中で……」
「そうか。ああ、畏まった方がいいか」
「いえ!いつも通りで構いません」
「それならレオ、一つ承認して欲しい事案がある」


 何でしょう、と顔を引き締めたレオに対し、ゲアハルトは一言、「王都に対し、戒厳令を敷きたい」と口にした。その言葉にレオは目を見開き、エルザも息を呑んだ。戒厳令を敷くということは、王都に住まう全ての国民の全ての権利を一時的に制限し、軍部の統制下に置くということだ。王都に攻め込まれている以上、今は非常事態である。未だ城下への被害は出ていなくとも、それも時間の問題でしかなく、王都から城下へと転戦するであろうことは目に見えている。
 そうなると、国民の存在は邪魔にしかならない。それを大人しくさせる為に戒厳令が必要なのだとゲアハルトは言った。「実際のところは家から出るなと命じたいだけだ」と彼が言い添えると、レオは僅かに表情を緩めた。しかし、次に彼が口にした言葉にレオはすぐにまた表情を強張らせた。


「ただし、戒厳令が敷かれているにも関わらずに外に出た者の命は保障できない」
「し、しかし、それは!」
「市街戦になった時、住民の面倒までは見ていられない。そうならないように城内で蹴りを付けたいところだが、市街戦にならない保障は何処にもない」


 戦えない住民を背に守りながら戦えるほどの余力は我々にはない。
 はっきりと告げられるその言葉にレオは何も言い返さなかった。否、言い返すことなど出来なかったのだろう。アイリス自身も、何も言えなかった。いざ、市街戦が起きたとして、そこにたまたま王都の住人がいたとしても、彼らを帝国兵から守りながら戦える自信はなかった。彼らに注意を割く分、それだけ隙が出来るということだ。特に今回、侵攻して来ている帝国兵らの腕前は鍛え上げられた精鋭の者であり、今まで戦ってきた帝国兵よりも数段腕が立つ者ばかりだ。
 そんな彼らからパニックを起こしかねない民間人を守りながら戦うなどということはゲアハルトやエルンストにとっても容易なことではないだろう。それが分かっているだけに、レオは首を横に振れないのだろう。ちらりとアイリスがエルザに視線を向けると、彼女も難しい表情を浮かべていた。


「……分かりました、許可します」


 ぽつり、とレオが呟いた。戒厳令を敷くということはゲアハルトに軍事権だけでなく、王都における行政権を始めとする全ての権限が委ねられることであり、王都ブリューゲルに住まう全ての国民の権利が制限されるということである。それに対して何も思わないということはないらしい周囲の兵士らは顔を見合わせていた。
 ゲアハルトの指示に従うという気持ちに変わりはない。だが、そこまでする必要があるのかという疑問があるのだろう。それに気付いているらしいゲアハルトは「現在、」と口を開く。


「キルスティ様の崩御が確認されている。シリル殿下も恐らく無事ではいらっしゃらないだろう」


 その言葉に兵士らの間には驚きが走った。とりわけ、レオやエルザの動揺は激しく、エルザは既に知らされていたことではあったものの、やはり揺るがずにはいられなかったようだ。ちらりとアイリスはレオに視線を向ける。彼は目を大きく見開き、信じられないと言わんばかりの顔をしていた。
 それが見ていられず、アイリスが視線を逸らすと「そのため、この事態を乗り切れば剥奪されているレオの王位継承権を復活させ、彼が王位を継ぐことになる」とゲアハルトは然も当然のことだとばかりに口にする。それこそ予想していなかったらしいレオは「待ってください!」と声を荒げるも、ゲアハルトは動じることなく、冷静な様子で彼に視線を向ける。


「お前の他に誰が王位を継承するんだ」
「それは……でも、オレは妾腹で……」
「だとしても、シリル殿下に次ぐ王位継承の順位はお前だ。腹を括れ」
「……っ」
「……この通り、急遽決まったことでレオ本人も動揺している。地位も確立していない彼が戒厳令も発令せずに王位に就けばどうなる」


 それこそ失脚させる為に反対派がこぞって国民への被害のことを訴え出すぞ。
 ゲアハルトのその一言にぴたりと兵士らは口を閉ざした。レオの即位をよく思わない者がいるであろうことは容易に想像できることであり、延いてはその余波が騎士団にまで及ぶことは想像に難くなかった。現在の作戦行動は全てゲアハルトによるものであり、騎士団主体で指揮されているのだ。自分たちの今後のことを考えればこそ、戒厳令を敷き、その上で帝国軍に勝利して王都を奪還しなければならない。


「話を戻すぞ。戒厳令を敷くと言っても、出来る限り民間人への被害は避けたい。そこで王都全体を半分に分けてそれぞれの警備と索敵を行う。第五、第七主体に第十と第十一、それから警備兵を連れて行け」
「司令官、それはあまりに兵力を割き過ぎているのではありませんか!?」
「いや、第十と第十一の団長はルヴェルチと懇意にしていた。あいつの息が掛かっていないとも言い切れない。監査が終わるまでは第五、第七がそれぞれを監督してくれ」
「りょっ了解しました!」
「民間人には家から出ないように徹底しろ。北と西はレオ、南と東はレックス、お前たちが団長の補佐に当たれ」


 その指示にレックスとレオ、第五と第七騎士団を率いる団長らは揃って敬礼する。兵力を割き過ぎだという声が上がっていたものの、決して範囲は狭くはない。何より門を下ろされ、逃げ道が塞がれているという状況であり、パニックを起こしかねない民間人を宥めて家に帰すだけでなく、索敵まで行わなければならないのだ。猫の手も借りたいほどに忙しいということは考えるまでもなく、帝国兵と遭遇しようものなら交戦しなければならないのだ。
 それを考えれば、決して兵力の割き過ぎだとは言えない。アイリスはそう思うも、ちらりとレオとゲアハルトに視線を向ける。レオを外に出しても大丈夫なのだろうかと心配になったのだ。レオがこの場に辿り着くまでにも、彼は命を狙われたはずだ。そのことを考えれば、彼は安全な場所にいるべきだろうと思えてならない。敢えて外に出すことに何か意味があるのだろうかと考えている間にもゲアハルトの指示が続く。


「次だが、第三はルヴェルチの捕縛に向かってくれ」
「司令官!ルヴェルチの件ですが、申し訳ありません、帝国軍に先を越され家人共々既に……」


 ヒルデガルトに向けて指示を出したゲアハルトに対し、レックスが慌てて口を挟んだ。「エルンストの指示か」と問う彼にレックスが頷くと、ゲアハルトは溜息を吐いた後に「先に口封じされたのなら致し方ない」とだけ言うと、ヒルデガルトに対して別の指示を出した。レックスはまだ何か言いたげな顔をしてはいたものの、結局は何も言わずに口を閉ざす。「地下通路に向かい、帝国兵の中隊を排除してくれ」と然もお使いを頼むような口ぶりのゲアハルトに彼女は呆れた表情を浮かべながら言い返す。そんなやりとりを横目に、アイリスはレックスが顔を歪めていることに気付いた。
 ルヴェルチの捕縛に失敗したことを悔やんでいるのだろうかと思うも、どうやらそれだけではないのだということが表情から読み取れる。どこか辛そうであり、苦しそうでもあるその顔に思わず声を掛けようとするも、それよりも先に「残りの第一、第二で城内の掃討戦に入る。第一は上階、第二は地階だ。第一の半数は先にキルスティ様の居室近辺でお二方を捜索しろ」とゲアハルトは全体に向けて命じた。この場合、自分は第二所属として動くべきなのだろうかと考えていると、兵士の一人が声を上げる。


「それでは広間の警備が手薄になるのではないでしょうか」
「この場の警備は必要ない。……この城には守らなければならないものなんてそう多くはないからな」
「しかし、」
「広間には俺が防御魔法を展開する。問題ない」
「そんなお身体では無理です!」


 堪らずアイリスは口を挟んだ。一人で立ってはいるものの、本当はそれさえ辛いはずなのだ。虚勢を張って常と何ら変わらぬ態度で指示を出してはいるが、辛くも苦しくもないはずがない。その上、防御魔法を展開するなど黙っていられるはずもなかった。振り向いたゲアハルトは驚いた顔をしたが、すぐに「平気だ」と首を横に振る。しかし、アイリスはそんな無理はさせられないと首を横に振ると、「わたしがやります」と前に進み出た。


「わたしが、広間に防御魔法を展開します」
「アイリス……」
「今のわたしに出来ることはそれぐらいしかありません。司令官は指揮に集中してください」


 わたしなら平気ですからと続けると、ゲアハルトは視線を伏せた。そして、暫しの後に「いつまで保たせられる?」と彼は問い掛けて来た。アイリスはちらりと視線を明かり取りの為に作られている広間の天井近くの窓に視線を向ける。そこはまだ暗く、夜明けまでまだ少し時間があることが伺える。しかし、これからの作戦は恐らく夜明けまでを目処に行われるはずだ。アイリスは視線をゲアハルトに戻すと真っ直ぐに彼を見上げて口を開く。


「夜明けまでは必ず」
「いい返事だ」


 ゲアハルトは微かに笑うと、兵士らに向き直る。そして、「この場は彼女に任せる」と口にすると大丈夫なのだろうかという不安の声が上がる。それは無理もないことであり、全ての兵士がアイリスのことを知っているわけではないのだ。少なからず、国葬での一件で目立つ存在にはなってしまった。だが、目立ちはしてもそれが彼女の力量を知らしめることに繋がったというわけではない。
 不安の声が上がることは尤もであり、アイリス自身、自分がと申し出はしたものの、本当によかったのだろうかと悩み始めたところで「問題ない」とゲアハルトは迷いのない声音で口にした。


「彼女の力量については俺が保障する。万が一のことがあっても俺が対処しよう」


 それならばいいだろう、と口にするゲアハルトに対し、反論は出なかった。というよりも、既に行動の指針が定まっているということもあり、すぐに動かなければならないと兵士らも思っているようだった。ゲアハルトは一つ頷くと、「夜明けまでだ」と言葉を発する。


「朝になれば、王都の住民を抑えることも難しくなる。朝になっても未だ解決出来ていないとなれば国の威信にも関わる。夜が明けるまでに片を付ける」


 諸君の働きに期待する。
 その言葉に兵士らは一様に敬礼を返す。そして、団長の指示の下、次々に広間を飛び出して行く兵士らを見送ったアイリスは殆どといっていいほど人気のなくなった広間の真ん中で杖を取り出し、それに魔力を込めると広間を覆うように防御魔法を展開した。そしてそのまま、彼女は瞼を閉じた。身体の痛みも心の痛みも、それら全てから目を逸らすように杖を握り締め、きつくきつく目を閉ざした。


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